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党の政策

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目黒区個人情報の保護に関する法律施行条例にたいし、岩崎議員が反対討論しました。

 私は日本共産党目黒区議団を代表し、議案第67号 目黒区個人情報の保護に関する法律施行条例に反対の立場から討論を行います。

 この条例の改定の趣旨は、自公政権が2021年5月に成立させたデジタル関連法の一環である、個人情報の保護にかんする法律が改定され、これまで条例をつくって個人情報保護制度を運用してきた地方自治体は同法の適用を受けるとし、同法の施行に必要となる事項について定めるとともに、従来の目黒区個人情報保護条例などを廃止するというものです。

 デジタル関連法の中心部分は、国や地方自治体が持つ膨大な個人情報のデータ活用を成長戦略に位置付け、外部提供した企業にAIで分析させ、儲けのタネにさせることを、デジタル改革の名で進めようとすることです。日本共産党は国会で関連法にたいし、個人のプライバシーの侵害、地方自治の侵害、国民生活への影響、利益誘導・官民癒着の拡大といった多くの問題があるとして反対しました。

 デジタル関連法の中の重要な柱の一つが、個人情報保護の改定で、地方自治体の個人情報保護条例が、それぞれ設けてきた個人情報保護に関する規則がデータ流通の支障になるとして、改定された個人情報保護法の全国的な共通ルールのもとに一元化するとしました。地方自治体の条例が築いてきた優れた到達点をリセットさせようとするところが大きな問題点であり、今回の区の条例の改廃は、こうした国の方針に追随するものです。

 個人情報保護条例は1970年代から80年代にかけて、地方自治体が持つ個人情報のコンピューター処理が広がる下で、電算処理に係る個人情報保護の条例制定から始まりました。それが、個人情報全般を保護する条例となり、1999年から政府が個人情報保護法制定の検討を始めるまでに、全国の約半数の自治体に広がったと言われ、2003年の個人情報保護法成立を受けて、すべての自治体で条例が制定されました。

 目黒区も1976年に電子計算組織の管理運営に関する条例を制定し、84年の公文書公開条例で個人生活情報の原則非公開、さらに保護の対象をすべての媒体に広げた88年制定の個人情報保護条例と、国に先駆けて個人情報保護の制度をつくってきた経緯があります。

 その経過については、情報公開・個人情報条例運用事典という書物でうかがい知ることができます。この本は現副区長と前副区長が共同執筆に名を連ねており、区ががんばって個人情報保護の条例づくりを先導し内容も発展させてきたことがわかります。まさに、目黒区も他自治体と一緒になって個人情報保護の分野で地方自治をリードし、個人情報保護条例は目黒において地方自治の象徴的存在の一つということができます。

 では、目黒区の個人情報保護条例はどこが優れているのか、このことについては、2003年の住基ネットに係る諮問に対する目黒区情報公開・個人情報保護審査会の答申で強調されています。

 この答申は条例について、「個人情報の収集や利用等に関してさまざまな規制を設けると同時に、いわゆる自己情報コントロール権の保障を明記した総合的、体系的な条例である」と規定しました。そして、その特色について、国の法律に欠けている自己情報の開示、訂正、消去等の請求権と目的外利用等の中止請求権を区民の権利として保障したこと、個人情報の収集は本人から直接収集するなど収集の制限、および目的外利用、外部提供など利用に関する規制や、電子計算処理に関する規制等を詳細に規定していること、これらの権利や制度を憲法13条に基づくプライバシー権を具体的に保障するものと位置づけ、それを尊重し保護することが、区民の区政に対する信頼を確保するうえで根底的な要件であるとしています。

 この条例をリセットし、国がこのたび改定した個人情報保護法の共通ルールに区の個人情報保護をゆだねてしまうとどうなるでしょうか。

 なによりも、法による共通ルール化の最大の目的は、匿名加工情報制度、すなわちオープンデータ化とオンラインによる情報連携を地方自治体に行わせることです。そのために、改定された個人情報保護法で規定される事項は改正法の内容に切り替えられ、収集の制限や目的外利用、外部提供などの利用の制限、オンライン結合の制限などの歯止めは取り外されてしまいます。

 地方自治体が保有する個人情報は公権力を行使して取得をしたり、申請・届け出に伴い義務として提出されたものです。介護、子育て、教育、健康など地方自治体が持つ膨大な住民サービスにかかわる情報は個人情報の宝庫です。それを企業の利益活動を含めて制限なく外部提供し、加工情報とはいえ個人に関する情報を外部に流通させ目的外利用を際限なく進めれば、明らかに、自己情報コントロール権、プライバシー権は後退してしまうことになります。

 また、改定された個人情報保護法により、情報の取得や利用、提供、オンライン結合等に関する審議会への諮問はできなくなり、諮問対象も限定され、区民を交えたチェック機関としての役割が後退してしまいます。国の個人情報保護委員会に助言等を求めることも可能としていますが、そもそも、この委員会は地方自治体への監視と勧告を定め、「条例でオンライン化や電子化を伴う個人情報の取り扱いを特に制限することは許容されない」とか「個人情報の取得、利用、提供、オンライン結合等について、類型的に審議会等への諮問を要件とする条例を定めることは、今回の法改正の趣旨に照らして許容されない」と強い言葉で述べています。区の自主的な判断が尊重されるのか甚だ疑問です。

 今回、条例の改廃にあたり、区は国の法に基づく施行条例であり法に関してはすでにパブリックコメントに付されているから、区としての意見募集は行いませんでした。しかし、国の改定された個人情報保護法に多くの問題点があり、目黒区が独自につくり育ててきた従来の個人情報保護条例を廃止するという、区の個人情報保護制度の変更とともに区民生活にもかかわる条例の改廃でもあり、地方自治の観点からも意見募集はすべきです。条例改定への手続きも大きな問題があると考えます。

 以上、個人情報の保護に関する法律施行条例の制定と、従来の個人情報保護条例の廃止は、憲法にもとづく自己情報コントロール権が大きく後退するとともに、チェック機関である審議会機能も縮小させ、地方自治をも後退させるものであり、本条例に反対します。

以上

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