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2012年度予算案に反対する討論を岩崎議員が行いました

 日本共産党目黒区議団の岩崎ふみひろ議員は3月29日、区議会本会議で2012年度予算案に反対する討論を行いました。全文は以下の通りです。

 私は、日本共産党目黒区議団を代表して、議案第32号、平成24年度目黒区一般会計予算案に反対の立場から討論を行います。

 東日本大震災は、地方自治体が今、早急に何をやらなければならないのかを改めて問いかけています。切迫している大地震から被害を最小限に抑え、生命と財産を守る体制をつくることが、今回の大震災から引き出された痛切な教訓です。
震災対策とともに生活支援も急がれます。国の構造改革路線とリーマンショック後依然続く経済悪化の影響で、直近の速報では昨年10月から12月期の経済成長率は年率で実質2.3%のマイナスで、家計収入も減っています。子育て層は年少扶養控除の廃止、特定扶養控除の縮小、子ども手当の縮小、お年寄りは年金収入の減少など、大きな影響を受けています。介護が必要なお年寄りや貧困が原因の孤立死も増えています。
 ところが、新年度予算案は、とても区民の切実な要求に見合うものではありません。以下、反対する理由を述べます。

 第1は、緊急財政対策と「行革」計画で700項目に及ぶ185億円の区民生活カットを容赦なく進めるとともに、国保料や介護保険料を引き上げることと合わせ、くらし支援が大幅に後退する予算案であることです。
ここ数年間、不十分でありながらも経済悪化の影響を受ける区民への支援策であった緊急経済対策「暮らしサポート」は新年度予算案から消えました。代わりに打ち出されたのが緊急財政対策による区民生活向けの切り捨てです。
 老老介護で限界に達し、特養ホームに入所したいと思っても入所できない待機者が1000人近くいるにもかかわらず、特養ホーム建設は延期。区内デイサービスも存続を求める声が上がっているにもかかわらず、2012年度末で3施設を廃止しようとしています。介護が必要なお年寄りへの紙おむつ代に1割負担が導入され、「こんなわずかな援助まで削るのか」と批判が上がっています。がん検診の縮小や1歳児検診の廃止など、お年寄りだけでなく乳児にも影響が及びます。
 障害者の理美容の補助券も4回から2回に減らされ、自己負担額が増えました。
 子育て関係も、認可保育園の保育料の値上げ計画、学童保育クラブのバスハイク廃止と、負担増と切り捨て計画です。
 さらに、区は区有施設の在り方を全体的に見直し、新年度中に考え方を示すとしています。しかし、効率化と職員削減を優先した施設の統廃合は区民施策を切り下げるだけでありやめるべきです。
 とくに、区立中学校の統廃合は、「望ましい学校の適正規模」を口実にすでに実行に移され、新年度は三中と四中、続いて七、八、九、十一中と統廃合が計画されています。ここでいう「適正規模」は、子どものためになるのか、あるいは、地域の核としての学校の役割はどうあるべきなのかが考慮されているのではなく、行政としての「効率」であり、「行革」計画に基づく教育費の削減を狙ったものです。結局、振り回されるのは生徒と保護者です。
 区民の生活を厳しい方向に追い込むのは、「福祉の増進」を掲げる地方自治体のやることではありません。

 第2は、求められている震災対策とはかけ離れている予算案であることです。
 首都直下型地震の切迫性が指摘されている中、目黒区など都心部の被害想定は、阪神淡路大震災と同様、建物の倒壊や家具の転倒などによる圧死、および火災・延焼による被害が大きいといわれ、住宅や施設の耐震化を早急にすすめなければなりません。
しかし、碑文谷体育館の耐震工事費の計上や木造住宅の耐震工事費助成の上限額は増額された一方、東山小学校の改築や中央体育館の改修等調査を延期し、木造住宅の耐震診断を無料から有料にし、区有施設の計画修繕を10%縮小するなど、耐震化と安全対策は後退しています。民間建築物の耐震化予算が増額しているといっても、ほとんどは、都の事業である特定緊急輸送道路沿道耐震化の予算であり、区の独自策は不十分です。とくに、木造住宅の耐震診断を無料から有料にすることは、耐震化への入り口を狭めることになり、重大な後退だと、建築関係者からも指摘されています。
 また、耐震診断を有料にすれば、区内業者にゆだねるべき耐震改修工事が無料の耐震診断を行っている大手建設業者に流れてしまいかねません。無料の耐震診断は、住宅の耐震化への入り口というだけでなく、区内業者の仕事確保の入り口ともなるものであり、その道を狭めることは、区内業者の仕事を狭めることにつながり、地域経済への影響もはかりしれません。たいへんな逆行です。

 第3は、くらしを切り捨てながら、大型開発には膨大な経費をつぎ込む予算案であることです。
 新年度予算案は、大橋地域の再開発に伴う予算が突出しています。「大橋図書館は改築して引き続き使うべきだ」「移設には反対だ」と声が上がり、反対運動が起きていたにもかかわらず、大橋図書館を再開発ビルの中に移転するために約25億円が計上されています。また、本来ならば、首都高のジャンクション屋上部分の公園整備費は首都高が経費を出すべきであるにもかかわらず、13億円もの事業費を区が肩代わりし、新年度は約9億円がつぎ込まれています。これらのうち約23億円は起債の発行、すなわち将来負担で賄っています。 
 新年度は、都立大跡地の施設建設や東急目黒線地下化事業、都市計画道路整備など過去の都市整備関連事業による起債の満期一括償還の時期を迎え、借換債として約20億円が計上されています。いまだに過去の都市整備関連の起債の償還も終わっていません。そうしたなかで、特養ホームの建設や東山小学校の改築経費を後回しにし、介護を支える高齢者の紙おむつ代補助を削り、わずかな予算である障害者の理美容補助まで削り、一方で再開発には大きな予算を計上して将来負担を増やす区政運営は、あまりにも区民不在というべきです。

 第4は、福祉・子育て・教育部門など区職員を今後3年間で200人も削減し、文教地区といわれた目黒区の優れた施策を削り、自治体としての責任を投げ捨てようとしていることです。とくに、福祉関係の削減は、「行革」計画でもいっさい具体的な計画は示さず、削減の枠組みだけを区民に押し付けました。
新年度は、区立保育園の経費削減を口実に非常勤保育士を38人削減し、第二ひもんや保育園の指定管理者制度移行に伴って異動対象とされた9人の正規職員についても、定数拡大のために活用しませんでした。そのため、新たに民間の認可保育園が新設されたにもかかわらず、区全体の認可保育園の募集枠は前年度と比べて33人も減りました。その結果、認可保育園に入園できない子どもは650人に及び、批判の声が高まりました。現在の経済状況を考えれば、保育ニーズは依然、高まることはわかっていたはずです。それにもかかわらず、区長がトップダウンで職員の削減を優先し、働く場所を確保できるかできないか必死の思いで保育所を探す子育て世代の切実な要求に背を向けた責任はたいへん大きいといわざるをえません。
 教育分野でも、区立図書館の区職員の削減に伴い開館時間を縮小します。図書館は単に本の貸し借りだけではなく、常に蔵書を充実させ、区民の知的要求にこたえ、問い合わせにも的確に対処する役割があります。区が打ち出している方向は図書館の役割を低めるものです。
 また、社会教育館についても区職員を引き揚げ、現場から専門の指導員をなくして業務委託していこうとしています。しかし、これは「実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならない」とし、「学校、家庭及び地域住民その他の関係者相互間の連携及び協力の促進」をはかることを目的とした社会教育法の精神からも反するものです。
 このように、区職員の削減を優先する区政運営は自治体としての責任を投げ出すもので、区民サービスの低下のみならず、区民の権利を侵害するものです。

 第5は、財政危機をあおり、区民生活を大幅にカットするやり方です。
 目黒区の財政は総務省の健全化判断比率でも「健全」と判断されています。三位一体の改革で地方交付税などが削減されて大きな影響を受けた地方の自治体と比べて、東京23区は都区財調制度があって財政基盤が強く、地方や三多摩の市町村ほど厳しくありません。特に、目黒区の財政力指数は23区で第5位です。23区の中では基金が少ないといって、財政危機をあおって将来の大型開発を視野に入れた基金の積み立てのために区民生活を大幅にカットするのは本末転倒です。
 23区のような大都市部でこそ生じる格差や環境問題を解決するために、中学生までの医療費無料化やごみのリサイクル化など、全国的にも先進的な福祉施策や環境対策を行っていけば当然、経常経費は増えます。税収が下がれば経常収支比率は上がるでしょう。しかし、「適正化」といって、いたずらに経常収支比率の目標値を定め、これまで積み上げてきた区民施策を切り捨ててしまうことは、自治体としての使命を投げ捨てるものです。
その前に、収入確保について区は真剣に努力したのでしょうか。それはたいへん不十分です。区長は、わが党の代表質問で消費税増税についての態度を問われたとき、「高齢化が進み社会保障費が増大する将来を見据えた流れの中で、今回の方向性が出されたと考えている」と増税に一定の理解を示しました。結局、国の構造改革路線に迎合する考えでは、区民生活を支えるために、本気になって国や都に財源確保を求める姿勢は貫けません。

 以上、5点にわたって問題点を指摘しました。今、目黒区にとって求められているのは、地方自治体としての役割を果たすために、いのちとくらしを守ることに全力を挙げることのできる区政に転換することです。
 大型開発を優先する区政をやめ、区民の税金を福祉・子育て、大地震対策に充てることです。中目黒駅前や目黒駅前、西小山駅周辺の整備について、大型開発を視野に入れた検討がされています。多額の税金を使うことになり、住民の合意も得られない大型開発中心の整備はやめ、震災対策中心の計画にすべきです。また、木造住宅密集地域については、強制的な手法による街づくりになりかねない東京都の不燃化プロジェクトの導入はすべきでなく、住民の意向に基づき、住宅の耐震対策中心の街づくりを進めるべきです。
 そして、区民の介護や子育て、いのちと安全を守ってほしいという願いにこたえ、 特養ホーム増設、認可保育園増設、必要な小中学校、体育館、区民センターの改修・改築、住宅の耐震化などただちにすすめるべきです。木造住宅の耐震診断の無料化は継続すべきです。
 JR跡地は売却するのではなく、区と都が福祉施設や子育て施設、公営住宅建設、およびみどりと防災スペースに整備すべきです。
 日常的に福祉・子育て、区民生活を支え、震災時には区民のいのちと財産を守るために奔走する区職員の役割は欠かせません。職員削減計画は見直すべきです。そして、施設問題は福祉や子育て、区民生活を充実させる立場から検討すべきです。
収入確保のためには、地域経済の活性化を思い切ってすすめることが必要です。首都直下型地震が切迫しているといわれるなかで、住宅や施設の耐震化を大規模に進めていくことは避けられません。大地震から区民のいのちと財産を守る仕事は優れた知恵を持っている区内業者にゆだねるべきです。震災対策と区内業者の仕事確保をしっかりと行い、循環型の地域経済をつくることが求められます。
 このような区政の実現めざし、日本共産党目黒区議団は引き続き、全力あげることを決意し、討論を終わります。

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